浄土真宗

親鸞聖人流罪の地:越後で

  親鸞聖人流罪の地:越後で  

                  

 2006年7月29日(土)、新潟県三条市で「ビハーラ医療団」第6回研修会「仏教と医療を考える集い」があり、午後3時の開催に間に合わせるため午前5時に起き眠い目をこすりながら家を出た。
 沖縄から小渡洋子、長浜美智子、志慶眞延子と私の4人が参加。自家用車、飛行機、モノレール、電車、新幹線、列車、タクシーと延々と乗り継いで新潟に向かった。新潟まで8時間余の行程であるが、「弥次喜多道中だね」と言いながらの楽しい旅であった。無事、午後3時前に到着。一番遠い沖縄から到着したということで係の方に歓迎された。
 参加者は全国各地にまたがり、毎年顔を合わせる方々と親しく挨拶を交わす。この会を通して全国の沢山の医療関係者や宗教関係者と年々交流が深まり、今では浄土真宗をいただいて歩む上で欠かせない会である。
 「ビハーラ医療団」は平成10年に同朋大学の田代俊孝先生を中心に結成された。医療の現場で働くもの、医療と宗教のかかわりに関心のある方々が対象である。
 ちなみにこの会の綱領は、 
 『ビハーラ医療団』の会員は、それぞれの場で、仏教精神に基づいて医療活動を行い、一人ひとりの人間が、心豊かに幸福な人生を全うしていくことに貢献するために、次のことに努めます。
   1)私たちは、「自信教人信」の立場で聞法します。
   2)私たちは、あらゆる「いのち」を尊び、共生の社会の実現に努めます。
   3)私たちは、病める患者と生老病死の苦悩を共有し、ビハーラ運動の普及に努めます。
 来年の研修会は福岡で開催予定です。
 今回、特に二つほど期待して来た。
 一つは基調講演で宗正元先生のご法話が聞けること。これまで研修会で、日頃は書物でしかお目にかかれない先生方(池田勇諦先生、宮城しずか先生、板東性純先生、梯實圓先生)のご法話を聞かせていただいた。目の前で直接お話を聞くことのインパクトは大きかった。もう一つは親鸞聖人が越後に流罪になった折の上陸地、「居多(こた)ケ浜」を訪ねること。
 29日は開会式の後、各地での活動、事例報告があった。そして午後6時半から恒例の懇親会。同じ教えに生きるもの同志、一年に一度の再会でしかないがすぐに打ち解けてしまう。もしかすると懇親会がこの研修会の目玉かも知れない。
 翌30日は宗正元先生の基調講演があった。宗先生は昭和2年福岡県に生まれ、真宗大谷派専修学院で約9年間教鞭をとり、教学研究所、東京専修学院院長を歴任。現在「行人舎」を主宰、著書多数。『いのちの建立』という講題であった。

どの人にとっても、どんな状況にあっても喜びである世界、いわゆる極楽世界が開かれるかが課題でしょう。命を見失っているものに名のり出て「いのちの建立」をなすのが南無阿弥陀仏です。いのちを見失っているものを背負って立つのが大悲、その大悲の願より出てきて、「汝帰れ」と呼びかけているのが南無阿弥陀仏。帰依所が明らかになり、他に道をさがす必要がなくなり、今ここに世界が開かれるんですね。

 研修会が終り昼食を済ませ、親鸞聖人が越後に流罪になった折に上陸された居多ケ浜を訪ねることになった。長岡西病院ビハーラ病棟で僧侶としてビハーラに関わっておられる若い中下大樹さんが、日本海を右手に見ながら約2時間高速道路を飛ばして我々を車で居多ケ浜まで案内して下さった。すっかり親しくなって、再会を約束して帰った。
 また居多ケ浜では、居多ケ浜記念堂主の古海法雲さんが初めての出会いにもかかわらず、記念堂、見真堂、竹の内草庵、国分寺などをご一緒にまわりながら詳しく解説して下さった。
 実は私にとって居多ケ浜を訪ねるのは2度目である。1987年広島から沖縄に帰り、浄土真宗をどう頂いて歩めばいいのかわからず路頭に迷った時、越後に流罪になった親鸞聖人のことがしきりに思われて、ひとりで居多ケ浜を訪ねたことがある。沖縄に帰って3年目、今から17年前のことである。聖人は流罪を「辺境の地にお念仏を届けるご縁」と頂いていたが、私は沖縄で途方にくれていた。居多ケ浜を訪れた日のことを今でもよく覚えている。夏の暑い日だった。砂浜に降り波打ちぎわを歩いた。夏の日本海はおだやかであったが、きっと冬の越後の厳しさは南国生まれの私の想像を絶していると思った。
 17年ぶりに訪れた居多ケ浜はにぎやかな海水浴場になり、まわりの風景もすっかり変わっていた。今から799年前、親鸞聖人が流罪になった地に再び立ち、お念仏を届けるために歩まれたその生涯に感謝し、自らのこれからの歩みの方向を確認して越後を後にした。

2006,12

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